能登半島地震レポート〈4〉―被災地における測量の現場から―

 

元日に発生した能登半島地震から半年以上が経過しました。

7月17日には、金沢市と能登半島を結ぶ「のと里山海道」と能越自動車道が、ほぼすべての区間で対面通行可能になり、アクセス面では一定の回復がみられるようになりました。一方で、復旧が遅れているという声が多く上がっているのも実情です。

利水社では、地震発生直後から測量をはじめとした被害箇所の計測に携わり、現在もその業務の真っ最中にあります。

そんな復旧業務の現場では今どんなことが行われているのかをお伝えします。

 

穴水町にある利水社能登営業所です。

地震により天井や壁、窓などに被害があり、6月に改修工事を終えました。

使用するにつれて明らかになる不具合もあり、今後もその都度対処しながら営業していく状況ではありますが、復旧業務に関してはここが拠点となり現在フル稼働しています。

 

地盤が隆起した輪島市門前町の海岸

能登営業所のある穴水町と、その北に面した輪島市を車で移動しました。

前述の「のと里山海道」をはじめ主要な道路は、被害があった箇所に迂回路を作ったり段差を埋めたりといった応急処置が施されているところも多くありますが、概ね通行できるようになっています。

開けたスペースには仮設住宅が立ち並び、被災された方々の生活が垣間見える一方、倒壊したまま手つかずになっている建物もあり、様々な事情から復旧のペースに差が生じているのが伺えます。

 

能登営業所から北へおよそ20㎞、輪島市にある輪島中学校です。

校舎自体の被害のほか、グラウンドの南側が大きく崩れ、駐車場やテニスコート、敷地脇の道路にもたくさんの地割れが生じていました。

グラウンド。元は平坦でした

駐車場

利水社ではこちらの被害の状況を把握するための測量を行い、平面図を作成。

次いで縦断・横断測量を実施し、地震によって生じた段差等の位置や高さを計測しました。

作業は3月から4月いっぱいにかけて行い、計測した点は約6000点に上ります。

また、周辺施設の関係でUAV(ドローン)を飛ばすことができない地帯だったため、棒の先にカメラをつけて地形を撮影し、簡易的なオルソ画像(上空からの歪みのない画像)を作成。そこから3次元の点群データを抽出するという、3次元的な計測も行いました。

測量時のグラウンドの状況

同グラウンド脇

続いて、同じく輪島市にある輪島港を訪れました。

ここは火災があった朝市通りからもほど近く、海底が隆起した影響等により、まだほとんどの漁が再開されていません。

当社では、2月頃から港全域の陸部の測量を実施。隆起した海岸はUAVレーザによる3次元計測を行いました。

輪島港。対岸に朝市通りの建物が見えます

白っぽく見えるのが隆起した部分

この日は港の一部となっている臨港道路の現地測量を行っていました。

全長300mほどの道路ですが、マンホールや建物の角など、構造物の位置をトータルステーションでひとつひとつ計測していき記録。作業には2~3日程度を要します。

奥では被災した建物の解体作業が進んでいました

並行して、海上では小型ボートにナローマルチビーム音響測深機を搭載し、海中の地形の3次元計測を行っています。

港内から沖の防波堤の周囲にかけて、約4㎢の海底を音波によって面的に計測していくのですが、隆起が甚だしくボートでも航行が難しい箇所もあります。

また海が穏やかな状態でないと正確なデータが取れないため、天候をみながらの作業となります。

 

輪島港ではまさに陸・海・空の技術を総動員しての計測が進行中であり、これらにより得られたデータは今後復旧の計画立案や設計等に活用されていくことになります。

 

地震の傷跡がそのまま残された現場を目にすると、これから先に控えた膨大な復旧作業を思わずにいられませんが、そのはじまりを担っているという重みも感じます。

利水社では今回ご紹介したほかにも、能登半島地震からの復旧にかかわる計測を石川県全域で行っており、また今後もさらなる業務を控えています。

その様子はまた折に触れお伝えしたいと思います。